第2回近大養殖魚ふれあい祭り−来て,見て,感じて,科学しよう!−開催レポートNew!!

近畿大学グローバルCOEプログラムでは,2010年9月18日および同年10月2日に,『第2回近大養殖魚ふれあい祭り』を開催しました。このイベントは,当プログラムの若手研究者達が主体となって企画・開催したものであり,普段は研究に勤しむ実行委員達が試行錯誤しながら進めてまいりました。このような企画開催にはナイーブな実行委員でしたが,多くの好意的なご意見を頂けたことを大変嬉しく思っております。参加者・参加希望者の皆様の水産科学に対する積極的な姿勢と寛容な態度に,格別の感謝を申し上げる次第であります。以下,実行委員達の開催レポートに続きます。今回は参加が叶わなかった皆様にも,当日の雰囲気が伝われば幸いです。
はじめに−第2回ふれあい祭りを振り返って−
実行委員長 谷口亮人(環境グループ・博士研究員)
委員長
今年度は、近畿大学グローバルCOE若手企画サイエンスカフェ「魚研(ギョラボ)x カフェ」を、“体験型サイエンスカフェ”として開催しました。21世紀COEの時に、第1回ふれあい祭りを開催しており、ふれあい祭りとしては、第2回ということになります。グローバルCOEプログラムの一環として行っている前年度までの計5回の魚研(ギョラボ)x カフェでは、セミナー形式を採っており、お茶やコーヒーを飲みながら、私たちの行っている研究の最先端について討論するというものでした。セミナー内容も好評でしたが、同時に行った研究体験ミニブースも非常に好評でした。「一見は百聞に如かず」という諺があるように、話を聴くだけでなく、実際に養殖現場を見ていただいて、実際に体験していただければ、より一層わかっていただけるのではないか、と私たちも考えました。そこで、第6回目の「魚研(ギョラボ)x カフェ」として、第2回ふれあい祭りを開催するに至りました。
昨今、大変ありがたいことに、近畿大学水産研究所が行っているクロマグロ完全養殖が、ますます脚光を集めるようになりました。水産研究所が成し遂げたクロマグロの完全養殖とは、最初の稚魚を採る以外は、天然資源に一切負担をかけない方法です。クロマグロをはじめとした水産食品の世界的なニーズの上昇により、天然資源の枯渇等が問題となってきていますので、養殖の担うところはますます大きくなってきています。今年3月にカタールで開催され、大西洋クロマグロ禁輸が問題となったワシントン条約第15回締約国会議は、記憶に新しいのではないでしょうか。クロマグロの完全養殖は、もちろん、一朝一夕で成就したものではありません。水産研究所では、クロマグロ以外にも、マダイやブリ、ヒラメ、クエなど、多くの魚種の養殖に成功しています。これらの経験をクロマグロ養殖にも生かし、32年という非常に長い歳月をかけ、2002年6月にやっと、完全養殖に成功した瞬間が訪れることになります。他魚種の養殖経験無くしては、クロマグロ完全養殖もなかったかもしれません。是非とも、クロマグロだけでなく他魚種を養殖する素晴らしい技術と素晴らしい努力の歴史を、実際に見ていただき、また、体験してもらいたい。そこから湧き上がってくる好奇心や疑問の数々について、一般の皆さまと共有し、討論しようと、メンバー一同が考えました。そのような経緯もあり、主にクロマグロ以外の養殖研究に触れていただく白浜イベントとクロマグロ養殖を肌で感じていただく大島イベントの2部開催となりました。
生簀見学
9月18日土曜日に開催した白浜イベントは、当初参加者が少なく、メンバー一同、開催まで不安な日々を送っていましたが、広報担当を中心とした懸命な広報活動や、参加者の方々の口コミなどにより、39名もの方々に参加していただきました。当日は、天候にも恵まれ、非常に熱い猛暑日でした。水産研究所メンバーによる海上生簀や陸上生簀見学の楽しさは折り紙付きでありましたが、実際に参加者の楽しそうな表情を窺ったときは、非常に喜ばしいものでした。奈良メンバーによる研究体験ブースでも、実際に手を動かしてもらって体験する養殖科学に対する、参加者の好意的な反応を拝見でき、非常にうれしく思いました。参加者の方々にできるだけ楽しんでいただこうと、イベント開催の一週間前まで試行錯誤していたブースもあったので、非常にほっとしました。
マグロ生簀見学
10月2日に開催した大島イベントは、大島実験場初の一般開放で不安もありましたが、それを天候も見ていたのか、非常に風の強い日となりました。当日は、より多く、より遠方の方にも参加していただきたいという考えで、午前の部と午後の部に分け、開催しました。大島イベントには、新聞やテレビでのクロマグロ関連報道による影響もあり、当初予定していたそれぞれの部で25名という募集定員のところ、午前の部38名、午後の部30名もの方々に参加していただきました。当日は、強風と共に雨も心配されていましたが、私たちの願いが叶ったのか、雨は降らずに、また時間が経つにつれ、風も弱まっていきました。すべてが初めてのことで戸惑うところも多くあり、参加者の方々に迷惑をお掛けする部分もありましたが、メンバー一同の素晴らしいチームワークと、なによりも参加者の方々の寛い心で、予定通りに無事進めることが出来ました。「もう終わりなの〜?」という、子どもの声が非常に印象深く、今後もこのようなイベントを続けていくべきだと、強く感じた瞬間でした。
白浜イベント(2010年9月13日開催)総括レポート
白浜イベント実務責任 津田裕一(環境グループ・博士研究員)
白浜イベント実務責任
本イベントの目的
2010年9月18日に、"第2回近大養殖魚ふれあい祭りin白浜"を開催いたしました。本イベントは、グローバルCOEギョラボカフェ(サイエンスカフェ)の一環で、グローバルCOE若手研究者が中心となり企画・実施しました。今回は、"第1回近大養殖魚ふれあい祭り(2007年)"に引き続き、一般市民の方に和歌山県白浜町にある近畿大学水産研究所へ"来て"いただき、実際の養殖現場である海上生簀や養殖魚を"見て"、養殖魚の給餌や実験を通して魚を"感じて"、養殖"科学"の面白さと近畿大学水産研究所の養殖生産を広く知ってもらうことを目的としました。
イベント概要
白浜イベントは、丸1日を使って2部構成で行われ、第1部は「実際の養殖現場をみてみよう」というタイトルで、参加者に養殖現場である海上生簀へ来ていただき、養殖魚の見学・給餌体験や養殖生産の説明を行いました。第2部は「水産科学の一歩をふみだそう!」というタイトルで、各研究グループの若手研究者による参加体験型の実験を行いました。本イベントの主な広報活動は、小・中・高校・奈良及び白浜・田辺近隣地区へのポスター掲示、新聞・テレビ等のメディアへの案内、昨年度サイエンスカフェ参加者への案内を行ないました。参加者は、当日キャンセルも有りましたが、県外を含めて1歳から60歳以上の定年退職された方まで、約40名の参加を頂きました。
開会!
【第1部】9時半から受付を開始し、10時10分の谷口委員長の開会挨拶で本イベントを開幕しました。その後、研究所の現場スタッフの船3隻で海上生簀へ移動し、マダイ・カンパチ・クロマグロ幼魚の給餌体験・説明を行ないました。参加者には実際に自分の手で餌を給餌していただき、養殖魚が餌を食べる時の迫力に驚きと歓声をあげてる様子で、スタッフも含め笑顔が溢れた楽しい時間を過ごされたと思います。また、スタッフによる養殖現場・魚の説明を聞き入っている年配の方の真剣な顔も印象的でした。イベント終了後に書いて頂いたアンケートにも給餌体験と見学がとても楽しかった、良い体験ができたと書いてくださった参加者が多くおられました。
寄生虫駆除!
【第2部】お昼休憩をはさみ、午後からは第2部へ移行する前に、研究所の陸上施設で海上生簀では見ることの出来なかった研究所で養殖されているキンダイ・シマアジ・クエ・ヒラメ等の魚を見学し、さらに研究所魚病班による寄生虫駆除のデモンストレーションが行われました。陸上生簀の見学では、その後、研究所内の講義室で各研究グループによる7つの実験ブースが設置され参加者体験型の実験が行われました。各ブース「仲間をつなづ視運動反応」(養殖グループ)、「魚の呼吸を測ろう」(環境グループ)、「養殖場環境のミクロの宇宙」(環境グループ)、「あなたの水銀測ります」(利用・安全グループ)、「肉色で鮮度を知る」(利用・安全グループ)、「血中マーカーで魚を知る」(利用・安全グループ)、「見て学ぼう!漁業・流通の仕事」(流通・リスク分析グループ)というタイトルで各グループの研究を紹介しながら実際に参加者に実験体験をして頂きました。どのブースも参加者が途切れる事もなく、ほとんどの参加者がすべての研究ブースを回られたのではないでしょうか。どの参加者もとても興味深く実験を体験されていた様子で、年配者の予想外の鋭い質問と子供の興味津々に顕微鏡を覗いている横顔がとても印象的でした。15時半に、委員長の開会の挨拶、参加者とスタッフの集合写真で本イベントを無事に終了することができました。イベントは、丸1日で行ったこともあり、年配の方は少々お疲れの様子でしたが、とても活気があふれた参加者もスタッフも満足いくイベントになったと思います。
研究体験ブースレポート
ブースA 仲間をつなぐ視運動反応
松本太郎(養殖グループ・博士研究員)
視運動反応実験!
ふれあい祭りin白浜では「仲間をつなぐ視運動反応」と題した展示をポスターと魚を使って行いました。視運動反応とは,動物が,眼の網膜に映る映像が同じになるように,自分の体を動かす反応行動のことです。たとえば,群れの中で泳いでいた魚が群れからはぐれそうになると,群れの元の位置に戻ろうとします。こうすることで魚は群れを作り続けることができます。このブースでは透明な円柱形の水槽の外側で白黒の縦縞ストライプ模様を回転させたときに魚が視運動反応によって縞模様を追う様子を観察してもらいました。この実験は子供たちに好評で,何度も縞模様を回転させて楽しんでいました。視運動反応はガラス瓶などを使って簡単に再現できるので,夏休みであれば小学生の自由研究のネタに最適と思います。視運動反応を実際に見てもらった後,視運動反応が魚の目のよさを測る研究に用いられていること,底曳網に魚が入るのにも視運動反応がかかわっていることを理解してもらいました。このブースでは魚の行動を目の前で観察して,魚をより身近に感じてもらえたと思います。
ブースB 魚の呼吸を測ろう
安田十也(環境グループ・博士研究員)
魚の呼吸の仕組み!
私は、本学グローバルCOEプログラムにおいて、養殖している魚たちが生簀の中で日々どれくらいのエネルギーを使っているのか推定する方法を開発しています。これを知ることは、養殖魚の健康管理だけでなく、残餌や糞などが周辺環境へ与える負荷の軽減策にも繋がります。エネルギー消費量を見積もる際、指標としてよく使われるのが、体内に取り込んだ酸素の量です。激しく運動した時は呼吸が荒くなります。従って、消費した酸素の量を計れば運動の激しさが分かる。このことは 、皆さんも感覚的に理解できるのではないでしょうか。ある運動をして消費した酸素の量または生成された二酸化炭素の量は、人間の場合はダグラスバッグとよばれる呼吸器を装着して測定します。しかし、それを養殖魚に装着するわけにはいきません。なぜなら魚は水中で生活し鰓から酸素を取り込み呼吸しているからです。逆手にとれば、水中に溶け込んでいる酸素の量を測定してやれば魚の酸素消費量を計測することができます。
前置きが長くなりましたが、白浜で行われたイベントでは、カニバル式溶存酸素計という測器を使ってトラフグの酸素消費量を計測する実験を実演し、魚が呼吸する仕組みについて解説しました。トラフグが遊泳すると水槽中の溶存酸素が少なくなる様子を興味深く見て頂けました。ちなみに人間でも同様に、密閉空間に閉じ込めれば次第に空気中の酸素が薄くなりますので、酸素の消費量を計測することができますが、効率が悪いのと安全性への配慮から殆ど行われません。
ブースC 養殖環境のミクロの宇宙
シャリファ ノル エミリア(環境グループ・大学院博士後期課程)
顕微鏡に映るものは?
私は環境グループ代表として、養殖場環境を誰がきれいに保っているかなどを知って頂きました。私のブースは、博士研究員の谷口さんや昨年度まで環境グループに所属していた菅原さんにも協力してもらいました。私たちは、海底堆積物から海水までの現場環境を小さな水槽に再現し、それぞれ生態的ニッチの異なる微生物群集について観察しました。多くの参加者にとって、蛍光顕微鏡を使うこと、および、細菌群集を彼ら自身の眼で見ることは、初めての経験だったように思えます。 このイベントは、すべての参加者に新しい情報をもたらすことが出来たので、成功したと考えています。参加者は、養殖の世界についてよりよく知ることが出来たし、スタッフは、一般の方々が養殖に対して抱いている考えを知ることが出来ました。今後もこのようなイベントが続くことを望みます。
ブースD あなたの水銀測ります
モク ウェン ジェ(利用安全グループ・大学院博士後期課程)
髪の毛から水銀を測る!
私は、水産食品化学研究室のブースを準備しました。私は、流通・リスク分析グループ博士研究員の原田さんや利用・安全グループ大学院生の田中さんの協力の下、海産物における水銀レベルに関して、注意深い説明を心がけました。さらに、参加者の水銀含量を解析するために、33名の髪の毛を採取しました。そのうち、高い水銀レベルを検出した方もいらっしゃいましたが、恐らくは、普段からよく魚を採っているかただと思われます(もちろん、高いといっても危険レベルには到底達しません)。概して、本イベントは成功のうちに終わったと感じています。ギョラボメンバー間の協力は素晴らしいものでした。参加者も、私たちの研究に興味を持ち、また楽しんでいただけたに違いありません。このイベントに参加できたこと、また、このイベントを成功させようとギョラボメンバーが協力し合ったことを非常に嬉しく思います。将来、またこのようなイベントを開催することを望んでやみません。
ブースE 肉食で鮮度を測る
ロイ ビモル チャンドラ(利用安全グループ・博士研究員)
魚の鮮度を見分けよう!
私は、利用・安全グループのメンバーとしてブースを設け、私の研究について説明しました。このプログラムを興味深いものにするために、クロマグロの肉色改善やその維持についてのポスターを作成しました。さらに、カラリメータ(色彩識別装置)を使って、参加者の肌色を測定することも行いました。これには、参加者だけでなくスタッフも非常に興味を持っていました。私は、クロマグロの肉色の改善やその維持が何故大切かについても説明しました。参加者からは、肉の品質に関する質問も多く出たため、それに答えるように心がけました。本イベントの狙いは、私たちの活動をみんなに知っていただくことです。今回の体験型イベントは、私たちの研究活動を知っていただくためだけでなく、私たちが今後活動していく方向性を見出すためにも非常に有効であると考えています。このプログラムは、私たちが一般の方々に歩み寄り、彼らのアイデアおよび知りたいこと、考え、提案を知る機会を提供していると信じています。最後に、このイベントを有意義なものにしたすべてのGCOEメンバーに感謝いたします。今後、日本だけでなく世界規模の消費者に対する質の良い魚や魚加工品に貢献しうる研究所としての近畿大学に注目したいです。
ブースF 血中マーカーで魚を知る
若木泰子(利用安全グループ・大学院博士後期課程)
魚の採血出来るかな?
今回 9 月 18 日(土)に白浜実験場で開催さ れた第 2 回目となるふれあい祭りのブース会場には、たくさんの参加者の皆様にお越しいただきました。ふだん私たちの応用細胞生物学研究室では、メタボリック・シンドロームの原因となる脂質代謝の問題を調べる研究を行っているため、「血中マーカーで魚を知ろう〜魚の健康診断」という企画名でブースをたちあげ、普段健康診断の血液検査でお馴染みの血糖値(グルコース)やコレステロール値が魚の場合ではどうな値になっているのか知ってもらい、また実際に血糖値を測定する実験を体験していただこうと考えました。しかし、魚類の場合、ヒトをはじめとする哺乳類とは違う傾向が多く、また採血方法も尾部の血管から行うという難しいものでした。私自身も初めて知ることや体験することの連続で、企画当初は実現するのか非常に危ぶまれましたが、水産学科の他研究室の皆様にアイデアやご協力をいただき、無事に成功することができて本当に感謝しています。
採血中!
私のブースでは、マダイの稚魚などの魚を入れた水槽を2台設置しました。また、近大マグロやコイなどから採取した血液サンプルや実験器具を置き、血糖値を実際に測ってもらうコーナーを設けました。参加者の皆様からは、多くの反響を得ることができました。特に、ヒトではメタボリック・シンドロームの診断として一般的な血糖値が、魚の場合ではストレスマーカーであるという意外性には反響が大きかったように感じます。水槽にいるマダイの稚魚たちにストレスをかけると体表の模様の変化が観察でき、多くの参加者が見入っておられました。また、実際に実験器具を手にとって血糖値の測定をする体験コーナーは好評で、小さな小学生のお子さんからご年配の方々まで、興味津々で取り組んでくださいました。今回の屋内ブースのイベントに設定された時間は1時間あまりでしたが非常に短く感じられ、終了時には「え〜もう終わりなの?」などと叫ぶお子さんたちもいて、楽しんでもらえたのかと安堵するとともに、もう少し長い時間イベントを続けたかったと思いました。今後は今回の経験を活かしてより充実したイベントにできたらと思います。
ブースG 見て学ぼう!漁業・流通の仕事
原田幸子(流通リスク分析グループ・博士研究員)
ゆったりビデオ鑑賞♪
「第2回近大養殖魚ふれあい祭り」白浜開催(2010年9月18日)において、流通・リスク分析グループは、ビデオ上映のブースを設け、マグロの生産・流通・消費までをビジュアルとして分かり易くお客様にお見せしました。実験体験ができるほかのグループとは異なり、当グループからはなかなか参加型の展示が出来ないということが課題として残りましたが、午前中の養殖場見学で少し疲れた方にはちょうど良かったのかもしれません。当日は晴天に恵まれ、白浜近郊の方だけでなく遠方からも多くの方にお越しいただき、無事、このイベントが終わりましたことを、ご参加・ご協力いただいた皆様に心より御礼申し上げます。
ブースH 養殖魚が出来るまで
白樫正(環境グループ・博士研究員)
魚の子供が見えるかな
私達のブースでは、「養殖魚ができるまで」をテーマに、午前中生け簀で見学した近大マダイの初期発達段階を知ってもらおうと、卵、ふ化仔魚、餌となるワムシやアルテミアを用意しました。加えて、午前中に淡水浴で駆虫したハダムシも実体顕微鏡下でじっくり見て頂きました。一番苦労したのが、準備段階です。異なる発達段階の卵を用意するため、浦神実験場からもらったマダイ卵を17℃、20℃、25℃のインキュベータに収容し、毎日水替えをしました。温度が高すぎては全部ふ化してしまうし、低すぎては発達しません。学生さん達に手伝ってもらいながら、卵を殺さないために気を遣いました。おかげで、当日は胚胎形成した卵からふ化したての仔魚までが揃いました。
ブースにはカメラを接続した実体顕微鏡を設置して、パソコンのモニターで一緒に観察出来るようにしました。大学院生の石元君がマダイの卵や仔魚を見せながら初期発達について説明した後、仔魚の餌であるワムシやアルテミアを見せました。やはり生きて動いているものは説得力があります。特に子供達はシャーレの中で動く魚やアルテミアを見て大はしゃぎでした。アルテミアの飼育についての説明もしたので、飼ってみたいという子供達には、アルテミア卵をお土産に分けてあげました。大人の参加者の中にはハダムシに興味を持っている方もいました。ハダムシの生活環やどうやって魚の皮膚に寄生しているのか、実際に拡大した虫を見ながら説明しました。急遽決まったブース発表でしたが、参加者の方々とじっくり話す機会もありましたし、皆様にも喜んで貰えたかと思います。
集合写真!
大島イベント(2010年10月2日開催)総括レポート
大島イベント実務責任 阿川泰夫(人工種苗グループ・博士研究員)
大島イベント実務責任
開催に向けた準備
平成22年度ギョラボカフェは水産研究所を中心に行う事を前年度から引き継いだ。4月19日に白浜実験場にて今年度1回目水産研究所博士研究員、博士課程学生との打ち合わせを開催し、今年度は白浜実験場で開催する方針を決定した。第2回打ち合わせを5月13日白浜実験場において開催し、予算の概算を見積もるとともに、大島実験場でのクロマグロ見学会開催も考慮する事となった。6月22日第4回打ち合わせでは、“第2回近大養殖魚ふれあい祭り”として白浜実験場9月18日、大島実験場10月2日に開催する事を決定した。
マグロの受精卵!
イベント概要
10月2日大島見学会当日、天気は晴れたもののやや風が強く、安全の為船を低速で運転する等に配慮した。大島実験場講義室にて完全養殖クロマグロについて説明し、受精卵、孵化後仔魚などの標本を参加者に観察して頂いた。陸上孵化飼育施設紹介後、海上生簀にて今夏孵化稚魚、昨夏孵化1歳魚、平成14年産8歳親魚の観察と給餌を行って頂いた。特に親魚給仕では体重160kgを優に超えるクロマグロの様子に歓声が上がった。遠くは鹿児島県、岡山市や奈良市から御参加頂いた。午前と午後開催分計定員50名を上回る70名の御参加を頂き、船の追加も行い見学会は盛況無事故の内に修了する事ができた。読売新聞、紀伊民報、NHK、ZTVの報道取材も御来場頂きクロマグロ完全養殖への注目度の高さを感じた。近畿大学主催市民へのクロマグロ見学説明会を初めて行う事が出来、日頃お世話頂いている串本町の皆様に紹介出来た良い機会ではなかったかと考える。
大島イベントスタッフレポート
金良洙(養殖グループ・博士研究員)
2010年9月19日と10月2日に白浜と大島実験場で開催された第2回のふれあい祭りは,私にとって参加者の立場ではなく準備や進行するスタッフとして活躍でき,意味深い経験でした。現在近畿大学水産研究所や奈良農学部の研究室で行われている研究や作業活動を多くの一般市民に公開する事で,水産食品を購入する消費者らが近大の安全・安心な生産システムや更なる改善を目指している研究活動を分かってもらう事が出来る良い機会に出来たと思います。さらに,10月2日に大島実験場で行われた近大クロマグロ養殖の見学や体験は,今までメディアを通じて放送された近大マグロのCM効果をの高さを実感しました。地元の方から遠方の方,また,中学生から70代までと幅広い方々に参加していただき,日本国民がクロマグロという魚種に対して非常に関心が高く興味深い事が分かるいい機会になりました。それと共に,世界唯一の完全養殖クロマグロを生産する近大の役目が重要であることを実感するとと共に更なる研究を目指すきっかけになりました。
フランシスコ デ ラ サバテ(人工種苗グループ・博士研究員)
2010年10月2日に開催された大島イベントには、午前の部・午後の部を合わせて50名以上もの方々に参加していただきました。午前の部を9時から12時まで、午後の部を13時から16時まで開催し、両方の部において、同様の説明および体験をしていただきました。まず、近畿大学によるクロマグロ研究の歴史について、その成功例や現在の問題点について紹介しました。その後、それぞれ2艘の船に乗船し、クロマグロの一年および二年親魚を見学していただきました。さらに、生えさやペレットの給餌体験もしていただきました。各船に、少なくとも4名のGCOEメンバーが乗船し、船上での安全面に留意したことはもちろんのこと、参加者からの疑問や質問に対処しました。
ビシュワジット クマー ビシュワス(養殖グループ・博士研究員)
10月2日に大島実験場にて開催されたふれあい祭りに参加できて、大変うれしく思います。このイベントもまた、白浜イベント同様、非常にエキサイティングなものでした。参加していただいた方々も、非常に大きいクロマグロやその子どもを見学することが出来、非常に楽しそうでした。私は、参加者に混じり、クロマグロへの餌やり体験に積極的に参加し、クロマグロが餌を食べる様や泳ぎ去っていく様子に、非常に感銘を受けました。クロマグロ養殖を維持するには、膨大なコストや労力を要することは容易に想像できますが、近畿大学はそれに成功しています。今回のイベントで、私は、クロマグロ養殖の難しさについて、少しだけ理解が進みました。私たちが日々行っているクロマグロなどの養殖科学に関する研究について、一般の方々に紹介していくことは非常に重要なことであると考えています。私は、本イベントが、クロマグロだけでなく、他の魚種についても、より深く考えるきっかけとなることを望んでいます。非常にありがたいことに、参加していただいた方々からも好意的なコメントを頂き、本イベントは成功のうちに終わったと確信しています。今後とも、このようなイベントに参加することはもちろんのこと、イベント計画や運営に積極的に携わって行きたいと思います。
メラニー アンドリュー(人工種苗グループ・博士研究員)
私が開催スタッフとして参加した大島イベントでは、白浜や奈良、浦神実験場からの多くのギョラボメンバーに出会えたこと、さらに良いチームワークを感じることが出来て、非常に良い経験でした。残念なことに、一日を通して、非常に風が強く、天候には恵まれませんでした。本イベントの一番の見せ所は、海上生簀のクロマグロを実際に見ていただいたことに尽きると思います。本イベントには、様々な年齢層の方々に参加していただきましたが、これは、近畿大学が行っている研究を一般の方々に広めていく非常に良い機会であったと思います。様々な所属のギョラボメンバーと共に行動することが少ないにもかかわらず、一日を通して、非常に良いチームワークを感じました。私は、今後もこのようなイベントを続けていくことが良いことであり、それが良いチーム作りになると考えています。
常本和伸(人工種苗グループ・博士研究員)
少し天気が心配でしたが、風が少し強かったものの、来ていただいたみなさまの「クロマグロを見てみたい」という気持ちが後押しして、絶好の見学日和となりました。当初は小学生未満の小さなお子様は危険だということで陸上施設のみの予定でしたが、大島実験場の澤田先生・岡田場長補佐・大島イベント責任者の阿川さん・谷口委員長をはじめ実験場の職員のみなさま・学生・スタッフ皆さんのおかげで小さいお子様も含めて全員、会場見学に行くことができました。海上いけすでは8歳のクロマグロ親魚・2歳魚・3か月齢の幼魚のえさやり体験もしていただき、小さいお子様から大人まで幅広い年齢層の方に好評でした。実際に親のクロマグロを見ていただいたときには、みなさんその大きさに圧倒されていました。ご参加いただいたお客様も当初の予定を大幅に上回る方々に来場していただき、改めてクロマグロに対するみなさまの関心度の高さを実感いたしました。白浜開催分にも来ていただいたお客様も多数おられ、スタッフとして本イベントを開催してよかったと思います。最後になりましたが、ギョラボカフェとしての大島実験場でのクロマグロ見学会は初めてで、会場設営などスムーズではないところもありましたが、皆様の協力の下、無事イベントを行うことができて感謝の気持ちでいっぱいです。
ハ ホー チュー(人工種苗グループ・大学院博士後期課程)
私は、本イベントに、写真撮影担当として参加しました。大島実験場での陸上施設見学の後、参加者は2艘の船に分かれ、クロマグロ養殖生簀を見学しました。参加者は、200 kgにも達する巨大クロマグロが生簀を泳ぐ姿を見て、大変エキサイティングしていました。さらに、クロマグロへの餌やりも楽しんでいただきました。生簀見学の後、実験場に戻り、アンケートに記入していただき、正午には解散となりました。昼食後、午後の部開催でした。午後の部は、午前の部と同様の内容で、13時に開始、15時に解散となりました。午後の部終了後、スタッフは使用場所の清掃を行いました。私にとって、GCOEメンバーとともに、ふれあい祭りイベントを企画・開催したことは大変良い経験となりました。GCOEメンバーは、日本およびマレーシア、韓国、バングラディシュ、南アフリカなどと多岐に亘る出身国から成るにもかかわらず、メンバー間の素晴らしいチームワークと理解によって、本イベントを成功のうちに終わらせることができました。私自身も、他のメンバーと共にイベントの準備をすることで楽しむことが出来ました。 本イベントは、近畿大学水産研究所大島実験場におけるクロマグロ養殖を、一般の方々に知っていただく非常に良い機会です。しかしながら、今回は、タンク内の生きたクロマグロ幼魚を観察することが出来ませんでした。今後のギョラボカフェにおいて、生きたクロマグロ幼魚を観察する機会があれば良いし、養殖クロマグロの試食会も行うことが出来たらさらに良いと思います。また、クロマグロを捕獲するところを見学することが出来たら、非常に良いサイエンスカフェとなるに違いありません。

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